長いこと、この探偵なんぞという仕事していると、

いろいろあるもんで・・・、
それにしても、ああいったことが土谷の身の上に起きるとは…。

 ほんと驚きました。
 めっちゃ驚きました。
 ばり驚いたバイ。

  で、

  そんなに勿体つけないで、早く言えって!?


まぁ、まぁ、焦らないでくださいよ。
たいしたことじゃないんで(たいしたことじゃないんかいっ!)


それは、ある男性の素行調査でのことでした。

勤務先を出たターゲットの男性は、最寄り駅に向かい、
電車に乗り込みました。
15分ほどで、とある駅で下車。

携帯メールを見ながら駅改札で立ち止まり、なにやら時計を眺めてる。

時間は夜の18時50分。


 「これは、待ち合わせだねー。」


ジーパン探偵と目で会話しながら、ターゲットの動きを待つ土谷。

そして、
  10分すぎ、15分すぎ・・・。

まだ現れないターゲットの待ち合わせ相手。


こちらも待ち人来たらずのテイを装い、張り込みします。


そして、さらに
  10分すぎ、15分すぎ・・・。

まだまだ現れないターゲットの待ち合わせ相手。トホホ。
ターゲットもメールをなんどもチェックしています。

19時過ぎを境に、改札付近から人が減っていき、
ターゲットもちらほらと周囲を気にしはじめました。

  ま・ず・い。

だって、小さなその駅の改札には、駅員さんとターゲットと
土谷しかいません。(ジーパンは少し離れたところにいた。)

 ちょっちゅ、目立つのサぁー。

そんなときです。天恵が訪れたのは。

電車が来るたびに人の波が改札を通り抜けます。
ふと、土谷の視界にある女性の姿が入りました。

(なかなかイイ感じの女性だなー。)

仕事中にそんな不謹慎な目で女性を見ていた土谷。
でも、次の瞬間、


 うん?
 なんか見たことあるゾ!?

な、ナント、
その女性とは、学生時代に付き合っていた彼女ではないですかぁー。

 うぉぉ、うむむぅ。

変な唸り声をあげたのもつかの間、土谷はひらめき、彼女に声をかけました。


そう、もうお分かりですよね。

  昔の彼女を待ち合わせのカモフラージュに使ってしまいました…(泣)

「へぇー、このあたりに引っ越したんだぁー。」
「あんまり昔と変わってないねー。」
「仕事は面白い?」

などと適当な会話を交わしながら、

  目線はターゲット男性をしっかり捕捉。

そんな土谷の目の動きに気づいた彼女が、

 「ねぇー、つっちー、どこ見てんのよー? なんかあるの?」

 「いやいや、友達が来てないかなぁー、と思ってサ…。」

慌ててかわす土谷。

半ば上の空で会話してると、
ターゲットの男性が動き、スーツを着た男性と連れ添って、
移動するのが目に留まりました。

 「あっ、もう行かなくっちゃ。久しぶりに偶然会えて嬉しかったヨ。じゃあ。」

と、意味不明のフォローを入れ、唐突に会話を終了して、
足早にターゲットを追う土谷。

ジーパン探偵と合流すると、

「土谷さん、いきなりオンナの人をナンパしてるんで、ビビリましたよ!
  なにやってんですか!!」

「いやいや、それって誤解だから・・。たまたま会って、かくかくしかじか・・・。」

「本当ですかぁ? そんなのありえないでしょー。」

「いやいや、だから本当にビックリなんだって!」

「と言ってもなぁ・・・。」

「そんなことはいいから、前見てろっ!


どうも人の話を信じていない様子のジーパン探偵。

なんでも疑う探偵癖が、すっかり身についてしまったみたいですぅ。


でもね、でもね、ジーパン。


  本当なんだって!


それにしても、昔の彼女を「イイ感じの女性がいるなぁ」、と思いながら見ていた土谷。

趣味が変わっていないというか、物忘れがひどいというか・・・、


なんかヤバイですな、こりゃ。

あぁー、こりゃ、こりゃ(泣)