だいぶ暖かくなり桜も散りはじめましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?

土谷は運転中に街路樹の桜をチラリといった感じで、
刹那的な花見を済ませました(悲)

ところで、今回のテーマは「頼りになる人」です。

探偵が依頼人様の”頼りになる人”になければいけないのは当然として、
ここでは我々探偵にとって”頼りになる人”のお話をしましょう。

なんといっても不安になるのが地方での素行調査です。
都内近郊や何度か足を運んだことのある地域ならいいのですが、
ターゲットがこれからどこへ向かうのか、
皆目検討もつかない場合などは極度の緊張を強いられます。

カーナビを見て、また付近の地図を眺めるなどして、
ある程度地理を把握しておくのですが、やはりなかなか難しい…。

そんなとき、”頼りになる人”とは、ずばりタクシーの運転手なのです。

抜群の地理感、パワーのある車種、こなれた運転技術…。
もちろん運転手にはアタリ・ハズレがあります。

ホヤホヤ新米運転手や安全第一お爺ちゃん運転手ではイザという時に不安です。
やっぱりパンチパーマか角刈りの年季の入ったオッチャンがベスト。
少々荒い運転が逆にこちらに安心感を与えます。
それを証明するかのような出来事がこの前ありました。


あれは大阪出張に行った時のこと。

ターゲットの移動手段が電車、バス、タクシー、迎えの車と選択肢が豊富にあり、
3名あまりの人員で対応するには非常に厳しい状況でした。

ターゲットが職場の裏口から出てきて大通りまで徒歩で移動。
その後流しのタクシーを拾いました。

実は職場の出口が表裏の2箇所あり、表で張っていた車両は
その時点でもう間に合いません。

裏で張っていた土谷は後続のタクシーを急いで拾いました。

ドアが閉まる時間さえもどかしく、乗り込むや否や

「すみません!前のタクシー尾けてください!!」

「おぅ?なんやしらんけど面白そうやんか!?任せとき!」


こうして浪速の大追跡が始まったわけです。


予想では自宅へ戻るか、女の家に向かうかのどっちかだろうと
踏んでいたのですが、早速ターゲットの乗車したタクシーは
彼の自宅へと向かいました。

今日は単純に帰宅して終わりかも…
ならばお好み焼き食べられるかなぁ…
などと不謹慎な妄想が頭をよぎりました。

するとです、

そんな土谷の妄想が伝わったのか、
そのまま自宅前をスルーしていくではありませんか!

 おぉっ!この展開は!?

頭に浮かんだお好み焼きの映像をかき消し、いざ臨戦体制へ。

しかし好事魔多しの例えどおり、そんな矢先に信号が赤に…。
ターゲットを乗せた車両は赤信号をうまくすり抜けています。

思わず
「やばいっ!!」

と声が漏れてしまいました。そのときです。

「クソっ、イッたれっ!」

という力強い声が運転席から放たれたのは!!

赤信号を無視して加速するV8エンジンの咆哮が響きます。
うーん、大当たりです。不肖土谷の選球眼は曇ってはいなかった…。


ターゲットの乗車したタクシーは交通量の少ない山間部を抜けていきます。

それを見た土谷はきつめのパンチが当たった運ちゃんの後頭部に向かって、
「すんまへんなぁー。近づきすぎず、遠すぎずでお願いしますわ。」

なぜか知らぬ間に関西弁がうつってます。

「任せんかい!こっちはプロやで。」
と、ノリノリの運ちゃん。

いちおうこっちもプロなんだけどなぁー、と心の中でつぶやいているうちに
カーチェイスもクライマックスへ。

見事に新興住宅地に建つマンションへと辿り着きました。

しかし彼がどの部屋に入るかを見届けるまでが勝負です。
ターゲットがタクシーから下車する横を通過しながら、大急ぎでUターン。
曲がる路地を探しているかのようなフリをして、
後部座席から彼の入っていく部屋を押さえました。

  思わず運ちゃんと感動の握手です…。


一期一会を大切に…、このときほどそう実感できたことはなかったですね。
もちろん世の中こんないい出会いばかりじゃないとは思います。
その証拠に土谷は未だに素敵な女性と出会えていないのです。

そんなことを言ってると、横から例のコワイ先輩が一言。

「出会っているけど、見逃しているんじゃない?」

うっ、それを言われるとイ・タ・イ…土谷なのでした。