出てこないんです、家から。
18時から張り込みを開始して、いまは深夜0時。
かれこれ、もう6時間待っているのですぅ。
依頼人様には1時間置きに連絡してますが、そろそろ出るはずとのお答え。
しかしさすがに0時を回ったことを告げると、
「なんでだろう、悔しいなぁ」としきり。
でもこっちも同じくらい、いや、それ以上に悔しいのです。
部屋灯りがついていて、人影もときおり見える。
なので、家にいるのは間違いない。
でも、出てこない。
依頼人様の話では、いつもならもう出かけているはず、とのこと。
ターゲットの自宅近くの小さな公園に潜む、探偵土谷の目は充血気味。
そして、格好の獲物を見つけた、嬌声にも似た羽音が迫り来る。
あぁ、虫除けスプレー、ぜんぜん効かねぇ・・・。
最近の蚊は、100円の虫除けスプレーなど物ともしないほど、獰猛なのです。
やぶ蚊にたらふく献血してあげながら、ひたすら待ち続ける土谷。
あちこち掻きながら、 ひたすら待ち続ける土谷。
太ももの内側、足の付け根あたりをなぜかズボン越しに刺され、
ちょっと掻くのが恥ずかしいけど、暗いからいいや、と思い、
でもやはりコソコソと掻きながら、 ひたすら待ち続ける土谷。
(はたから見るとかなりアブナイ人!?かも)
そんな土谷に、無情にも依頼人さんから撤収の指示が。
む〜ん、仕方がない。(ポリポリ...)
でも、あと30分したら出てくるような気が…。(ポリポリ...)
そんな妄想を振り払い、蚊に刺された痕に爪で×をつけ、
後ろ髪を引かれる思いで現場をあとにした土谷は、
家が見えなくなるまで、バックミラーを見続けたのでした…。